わかるとすっきりする、というおはなし ーHIVとの出会い編ー
いつもお知らせばかりなので、たまにはブログらしいことを。
ああ、私はあのとき怖かったんだなあということと
ああ、あのひとも怖かったんだなあ、というのが分かったら
すっきりしたんです、というお話です。
(長いよ!)
16年間、ちょっとした怒りを抱えていました。
16年前、場所は献血センターの会議室。
「本人にしか言えない重要なお知らせがあるので来てほしい」
という献血センター所長からの伝言を母から受けて私はそこにいました。
相手までだいぶ遠いなと感じるくらいの大きさの机があって
向かいに所長、私の隣には女性の看護師さん。
私の記憶では、所長はしばしの沈黙の後、まずこんなふうに言いました。
「お願いがあるんです。もう献血をしないでほしいのです。」
それを聞いた時、私は
「回りくどい言い方をしないで、本題をとっとと言え!」と思いました。
そして口から出た言葉は
「で?」
はい、ここでタイム!
説明しよう!(タイムボカン風に)
ついこの間まで私は、そこにあった沈黙やその言い回しに
「まどろっこしい!」と怒っていた、と思っていたのだけど
実は、このとき、この後言われることを予想していて
でも、そこにたどり着くまでの待ち時間が長くて、
子供のころに注射にならんでいるときのような
待てば待つほどドキドキが大きくなるような
そんな緊張や恐れを感じていたのでした。
それを、あいつの言い方が気に食わん!
と怒りに置き換えて発表していたのが当時のオレ……。
がーん。
怖かったんだねえ、不安だったんだねえ16年前のワタシ……。
そこではあたたかさや気楽さが見つけられなかったもんねえ。
続きに戻ります。
そして所長が口にしたのは
「HIVに感染しているようなので、病院できちんと検査してください」
すかさず、看護師さんが
「大丈夫?」
これを聞いた時、看護師さんに対してイラッ。
HIVに感染すること
=スゲイヤバイこと
=だからこいつ取り乱す
って思ってんでしょ?
看護師なんだから、HIVについて正しく知るべきでしょうが!
そんで正しく知っていたとしたら、
そんなに恐れることじゃないって分かるはずでしょうが!!
で、出てきた言葉は
「はあ?なにがですか? まったくもって大丈夫です(アナタのケアなんていらないし)。」
はい、タイム!
説明しよう!(タイムボカン風に)
看護師さんのことを勝手に決めつけて、その妄想の中で怒っていたわけです。
でも、私は「大丈夫?」と言われたとき、悲しかった。
私がどんなふうに感じているかを聞いてほしかった。
あのときの私は理解されること、聞いてもらうことが大事だった。
医療関係の人には、HIVについての知識を持つこと
そしてHIVに動じないでいることを強く望んでいた。
(当時『AIDS and Its Metaphors』というスーザン・ソンタグの論文を読んでいて、HIV/AIDSに関する思い込みや決めつけに対して憤りを感じていた。)
長くなりました。
けど、もうちょっと。
これ、16年も前のことで、たまーに思い出す程度の出来事になっていました。
でも、
「一方的に何かを言う立場にある人って、実は怖いと感じていることが多い。」
ということを聞いた時に、この場面が出てきた。
そして、「一方的に言われた」ときの自分の感情が
ぱーっとやってきて、ぱーっと去っていって、そして。
ああ、所長さんも看護師さんも、不安や恐れを感じていたんだなあ。
それなのに、話してくれたんですねえ。
それなのになんかすいませんでしたねえ。
ありがたいねえ…。
というところにいきなりたどり着いた。
なんていうか、ほぼ一瞬のうちに起こりました。
ちなみに、この話には、献血センターに私が行ったあと、
心配した親が献血センターに電話をしたら
電話口で事情を話してしまう、というオチがあります。
本人わざわざ行ってんのに!
ていうか本人にしか言えないんじゃなかったのか!
情報管理が甘い!
とか、とにかく当時は怒鳴り込みにいってやろうか
というくらい怒りを感じていたけど
これについても、言いにくいことを言ってくれて
なにからなにまでありがたいねえ…。
と、心底感じていますナウ。